極端な温度環境は 植物の代謝に 影響を与えます。過度の熱は酵素や他の タンパク質を変性させ、極度の低温は細胞内水 を氷結させます。植物はどのように熱や低温による ストレスに応答しているのでしょうか?周囲の温度が 高くなると、植物は日中の 光合成やCO2の 吸収をやめて 気孔を閉め、水が大量に失われるのを 防ぎます。熱ストレスを受けた 植物細胞は 熱ショックタンパク質 と呼ばれる特殊な タンパク質を大量に生成します。熱ショックタンパク質は、他のタンパク質を 機能性のある形状に 変形させたり、酵素とタンパク質を 変性から保護したりします。熱や低温のストレスを 受けた植物は、細胞膜の 脂質組成を調節して 最適な膜流動性を保ち、細胞の正常な状態を 維持しようとします。膜流動性は 細胞膜を通過する 分子の移動を制御し、細胞への出入りを阻止する 膜の浸透性に 影響を与えます。二層に並んだリン 脂質が、細胞膜の 基本的な構造を 形成しています。この二重の層の脂質組成は 飽和脂肪酸または 不飽和脂肪酸によって 構成されています。熱ストレスを受けると、高温の熱によって 脂質二重層の流動性が 高まり、浸透性が 向上して漏れやすくなります。植物は熱に対する 耐性を高めるため、細胞膜に含まれる 飽和脂肪酸の量を増やし、膜の流動化を 防ぎます。低温によるストレスを 受けると、脂質二重層は より硬くなり、浸透性が低くなります。この場合、細胞膜に含まれる 不飽和脂肪酸の量が増加し、細胞膜の剛性が軽減され、最適な流動性が 維持されます。多くの植物では、氷点下の温度になると 細胞壁の中や細胞間の 空間に氷が形成され、細胞質から水が 流れ出し、細胞の脱水が 起きます。脱水を防ぐため、多くの 耐霜性植物は 細胞質中に糖などの 溶質を蓄積させ、浸透ポテンシャルを 制御しています。熱や低温のストレスに対する 適応メカニズムによって、植物は恒常性を維持し、生き残ることができるのです。