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動物の浸透圧

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Tonicity in Animals

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March 11, 2019

溶液の浸透圧は細胞がその溶液中で水分を得るか失うか決定します。浸透圧は、異なる溶質に対する細胞膜の浸透性と、細胞内外の溶液中の非浸透溶質の濃度に依存します。半透膜は一部の溶質の通過を妨げますが、水がその濃度勾配に従うことを許せば、水はモル浸透圧濃度の低い側(すなわち溶質濃度の低い側)からモル浸透圧濃度の高い側(すなわち溶質濃度が高い側)へ移動します。細胞外液の浸透圧は、浸透の大きさと方向を決定し、3つの考えられる状態として、高張、低張、等張となります。

等張性溶液

生物学では、接頭語の“iso”は「等しい」「等量である」を意味します。細胞外液と内液が、内外で非浸透性溶質を同濃度持っている場合、その溶液は等張性です。等張性溶液は、水の正味の移動がありません。水は依然として内や外へ移動していますが、その割合は等しくなります。したがって、細胞の体積は変化しません。

低張性溶液

接頭語の“hypo”は、「低い」「未満」を意味します。内側に対して外側で、非浸透性溶質の濃度が低く、水の濃度が高い場合は常に、その環境は低張となります。水は細胞内に移動し、細胞は膨張します。動物細胞では、膨張により最終的に細胞は破裂して死にます。淡水は低張性環境の一例です。淡水の生物は、湖や川などの周囲の水域に比べ、細胞内の浸透圧が高い(塩分濃度が高い)傾向にあります。

高張性溶液

反対に、接頭語の“hyper”は、「より多く」「より上」を意味します。高張状態では、細胞外液は細胞内よりも多くの溶質を含み(すなわち、高い浸透圧)、少ない水を持ちます。そのため、水分が細胞外へ出て、動物の細胞は収縮します。塩水は、たいていの細胞内液に比べ浸透圧が高い(塩分濃度が高い)ため、高張性細胞外液の一例です。

浸透圧調整

高張液や低張液で起こる収縮や膨張を避けるため、動物細胞は浸透圧平衡を維持する方法を持たねばなりません。浸透圧のバランスをとるプロセスは浸透圧調整といいます。浸透圧調節の方法は、「調節」と「順応」の2つに分類されます。浸透調節型動物は、環境条件に左右されず内部の浸透圧条件を制御・維持します。逆に、浸透順応型動物は、能動的および受動的な内部プロセスを用いて環境の浸透圧を模倣します。

人間を含む多くの動物は、浸透調節型です。例えば、高張性環境の塩水に生息する魚は、大量の水を摂取し、塩分を頻繁に排泄することで、環境中へ失われる水分を調整できます。淡水に生息する魚は、頻繁に排尿し水分を体外に放出することで、細胞内へ絶えず続く水の浸透を緩和します。

イセエビやクラゲなどの多くの海洋無脊椎動物は、浸透順応型です。浸透順応型動物は、体内の溶質濃度(および浸透圧)を周囲の濃度と等しくすることで、環境中において頻繁な増減なく成長できます。