ほとんどの哺乳類で、雌は2本のX染色体を持ち、雄はXとYを持っています。その結果、雌のX染色体上の突然変異は、2本目のX上の正常な対立遺伝子の存在によって覆い隠されることがあります。X染色体上の突然変異から生じる形質変異は、「X連鎖性」と呼ばれます。
よく研究されているX連鎖性形質の例として、色覚異常があります。網膜の光受容体で赤と緑の色覚をつかさどる遺伝子に突然変異が起こると、色覚異常になります。この潜性の突然変異によって女性が色覚異常になることもありますが、変異したX染色体を2本持っている必要があります。色覚異常は男性に多く見られます。男性はX染色体を1本しか持っていないため、突然変異を補う2本目の染色体を持っていないからです。
色覚異常は、母から子へと受け継がれます。突然変異したXは、母から子の半分に受け継がれ、子は父からYを受け取ます。一方、色覚異常の男性は、色覚異常の対立遺伝子を娘全員に伝え、娘は母方の対立遺伝子に応じてキャリアーか色覚異常のどちらかになります。時には、このようなX連鎖性の突然変異が、母親や父親からの遺伝ではなく、自然発生的な突然変異によって生じることもあります。
もう一つのX連鎖性疾患のよく研究された例として、血友病があります。血友病は、ヨーロッパの君主に多く見られることで知られる出血性疾患です。血友病は、血液凝固因子であるVIIIまたはIVの突然変異の結果、怪我をした後の出血が長くなり、自然に関節の出血を起こすことがあります。現在、血友病の治療法はありませんが、遺伝子治療の可能性が検討されています。